2005年 10月 17日
メゾン・ド・ヒミコ その2 |
ネタバレありありなので、映画の内容を知りたくない方はご注意ください。
沙織の罵倒は、娘である以上当然受けるべき愛情と保護を得られなかった、という子供の父親に対する怒りであったと思います。
言葉は激しくても、血の繋がりを感じさせるものです。
それに対して、ヒミコは親子としてではなく、人対人として沙織に対峙します。
人として、あなたが好きだと。
ヒミコは自分に対する憎悪を抱いた沙織という存在をそのまま認め、受け入れているのです。
この時点で、沙織はこれまで自分を支えてきた憎悪の対象を失ってしまいます。
自らは全く望んでいないのに、癒されてしまったのです。
これはやるせないですね。
このやるせなさが、その後の沙織の行動へと繋がっていくのではないかな、と思います。
この映画はゲイについての話であることが大前提なのですが、ゲイであるかどうかというのは途中からあまり意識しなくなりました。
苦しみ、悩み、傷つき、でもちょっとしたことに喜びを見いだしながら淡々と生きていく(そして死んでいく)のはゲイも私も、老人も若者もみんな同じだな、という印象が残りました。
もっと社会的問題提起を期待される方には、そこが物足りない部分かもしれませんね。
それにしても山崎さんの女らしさにはくらくらしました。
トイレの鏡の前で化粧直しをするのが夢だったなんて!
もう、スクリーンの中に駆け込んでぎゅっと抱きしめてしまいたくなりました。
それから、「ドレスが似合うかどうかなんて、もうどうでも良くなっちゃったわね」というセリフ、大好きです。
ホームのみんながピシッとダンディにきめて登場するシーンに繋がる、さりげないんだけど、心に残る言葉です。
キャスティングも素晴らしかったのですが、オダギリジョーさん演じる春彦の、ヒミコに対する愛情の描写がちょっと淡泊過ぎじゃなかったかな。
もうちょっと何かを感じさせて欲しかった。
私には専務役の西島秀俊さんが印象的でした。
色彩の美しい、素晴らしい映画です。
by naocco8
| 2005-10-17 23:11
| Movie