2009年 11月 16日
マロのこと |
マロの本当の名前は、マーロウだ。
そのおやじ顔から、迷探偵フィリップ・マーロウにちなんで名付けたのだ。
でも誰もマーロウなんて呼ばなかった。
マーロウはマロになった。
マロはノラ猫だった。
知り合いの家に迷い込んできたのを、両親が引き取ったのだ。
すでに成猫だった。
おそらく捨てられたんだろう。
来た時には人間不信の塊で、ソファの裏側に隠れたまま、目だけを光らせていた。
12年もの時間をかけて、マロは少しづつ家族に馴染んでいったけれど、子供のように可愛がられて育った猫のようには、人に心を許すことはなかった。
それでもゴハンが欲しいと訴え、寒くなればひざに上り、両親の帰りが遅くなればすねてみせた。
背中を撫でてやれば、長く太いしっぽをゆらゆら揺らして喜んだ。
マロは病気持ちだった。
膀胱に砂を溜めてしまう病気で、すぐに血尿を出した。
手術で膀胱の石を取り除いてからは元気だったが、処方食しか食べることができなかった。
マロは先日、病院の酸素室で息を引き取った。
元気がなくなって獣医さんにつれていった時には、肺に水が溜まって、もう瀕死の状態だった。
先生は、寿命ですよと慰めてくれた。
マロはあっけなく死んで、あっけなく焼かれた。
その時はそういうものだと妙に冷静な気持ちでいたのだけれど、少し時間が経った今、じわじわと寂しさが実感となってきている。
マロは少しでも幸せだったんだろうか。
女の子からキャーカワイイ!とは決して言われないおやじ顔で
立派なワンちゃんですね、と間違われるほどしっかりとした体つきで
鋭い牙と爪を持ち
臆病で
間抜けで
わがままで
愛想がなくて
ほんとうにほんとうに美しい猫だった。
今ごろ天国の草原をのそのそ歩き回っているのかな。
おやすみ、マロ。
やすらかに、おやすみなさい。
by naocco8
| 2009-11-16 23:47
| つれづれなるままに